【目安は3カ月から半年程度】大規模修繕の工事期間を把握!1~3回目でそれぞれ異なる点に着目 | 株式会社ニーズワン

コラム
2022年12月9日

【目安は3カ月から半年程度】大規模修繕の工事期間を把握!1~3回目でそれぞれ異なる点に着目

 

マンションを維持管理するために欠かせないのが大規模修繕工事です。事前に計画を立てた上で、建物診断などで修繕箇所を特定して行われるのが一般的ですが、実際の工事にどれくらいの期間が掛かるのか知らない方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで今回は大規模修繕工事の平均的な工事期間について解説するので、参考にしてください。

 

大規模修繕の期間は3カ月から半年が基本!

 

マンションの大規模修繕工事は、計画段階から工事が実際に完了するまでに2年から3年程度の期間が必要になります。

各工程に要する一般的な期間の目安は、大規模修繕工事の計画から着工に至るまでに1年から2年程度、工事着工から完了まで3カ月から半年程度です。もちろん、マンションの大きさなどによって大規模修繕工事に掛かる期間は異なり、大規模なマンションや高層マンション、団地などでは、工事着工から完了までに1年程度やそれ以上の期間が必要となることもあります。

また、マンションの大規模修繕工事は定期的に複数回行われ、そのたびに必要になる期間が異なるのが一般的です。なぜなら、築年数が経過するにつれて、修繕する範囲が変わるためです。

次に、大規模修繕工事の回数による流れや内容の違いを紹介します。

1回目の大規模修繕工事の流れと内容

1回目の大規模修繕工事はマンションを新築してから11年目~15年目のタイミングで行います。

2回目の大規模修繕工事の流れと内容

2回目の大規模修繕工事は築年数21年目~25年目を目安に行います。

2回目の修繕工事では給排水管設備の交換が必要になるケースが多いです。これは配管設備の寿命が25年~30年程度となっているためです。

3回目の大規模修繕工事の流れと内容

3回目の大規模修繕工事を行うのは、築年数31年~40年が目安となります。

3回目の修繕工事では、一般的な修繕に加え、マンションの性能や機能を更新するための改良工事が実施されるケースが多くなるでしょう。
2回目で提示した雑排水管工事は3回目のタイミングで行われるケースもあります。

 

大規模修繕の期間は、戸数によって大きく変動します

 

大規模修繕工事の期間は、工事項目だけではなく、マンションの戸数によっても変動します。

ここでは、マンションの規模による大規模修繕工事の期間について解説します。

小規模マンション(総戸数50戸未満)

総戸数が50戸未満の小規模のマンションの場合、大規模修繕工事の工事期間は3カ月から4カ月程度になるのが一般的です。

ただし、マンションの規模が小さいからといって、大規模修繕工事がすぐに完了すると安易に考えるのは良くありません。修繕工事の実施に向けて住民の意見がまとまらなければ、準備の完了や工事の開始までに時間が掛かってしまうからです。

準備段階で組合員と意見調整を実施し、バランスのいい修繕工事の計画・実施を進めるのが重要でしょう。

中規模マンション(総戸数50~100戸位)

総戸数が50戸から100戸程度の中規模のマンションでは、大規模修繕工事の工事期間は4カ月から6カ月程度と考えておきましょう。

小規模マンションの工期よりも長くなるのは、単純にマンションの規模が大きくなることが影響するためです。中規模マンションでは階数が5階以上になることも多く、足場の仮説範囲や建物の外装面積などが増加します。また、戸数が増えると設備数も比例して増えるため、工事完了までに時間が掛かります。

大規模マンション(大規模:100戸以上・団地・超高層タワーマンションなど)

総戸数が100戸を超えるマンションや高層マンションなどの大規模マンションの場合、大規模修繕工事の工事期間は少なくとも半年程度、長ければ1年以上掛かると考えておくといいでしょう。

大規模マンションには総戸数が500戸や1,000戸を超えるようなマンションやタワーマンションもあり、修繕範囲が広くなることに加えて、共同施設などが併設されているケースもあるため、工事完了までにかなり時間が掛かってしまいます。また、大規模マンションでは修繕工事期間中に、管理組合の役員任期が終了する可能性がある点にも注意が必要です。

大規模修繕工事を安全に施工するためには、新たな役員(修繕委員会の担当者)を速やかに選出しなければなりません。

 

大規模修繕中の防犯対策!足場の空き巣に要注意

 

大規模修繕工事の期間中、特に注意しなければならないのが空き巣による被害を防止することです。

空き巣が増加する理由として考えられるのは、下記のとおりです。


工事業者などを含めて多くの人が出入りするため不審者が紛れ込みやすくなる
工事中は騒音が起きやすく被害に遭っても音が紛れやすい
マンションの周りに足場が設置されているため高層階の部屋にも侵入しやすくなる
足場にメッシュシートが張られることが多く不審者が隠れやすい
工事関係者の出入りの際に一緒に出入りされるケースがある

空き巣を行う者の傾向として、玄関やベランダから侵入するケースが多く、特に大規模修繕工事中のマンションは格好の餌食となりやすいでしょう。

また、空き巣被害が発生して、対策を怠ったことに対する故意や過失が認められた場合、マンションのオーナーや管理組合が訴えられる可能性もあります。そのため、大規模修繕工事中は適切な防犯対策を講じ、居住者へセキュリティへの用心について周知しなければなりません。

張り紙やポスティングなどで大規模修繕工事を行うことやセキュリティ対策を講じてもらうことを知らせたり、工事会社に防犯対策の内容を確認して、足りないと感じたら追加の対策を依頼し、工事期間中の防犯対策を講じましょう。

 

長期になる場合は、国土交通省のガイドラインも確認

 

マンションの大規模修繕工事が長期にわたる場合、国土交通省のガイドラインを確認しましょう。

長期修繕計画の作成者(マンションの分譲会社や管理組合)は、ガイドラインを参考にして長期修繕計画を作成し、計画に基づいて修繕積立金の金額を設定するよう記載されています。

また、大規模修繕工事に関わるさまざまな項目に関して、設定すべき目安やポイント、注意事項なども記されています。特に、下記の項目はしっかり確認しましょう。


マンションの基本情報記載欄
修繕計画の総括表
長期修繕計画の計画期間
修繕周期の設定
工事の単価設定
修繕積立金の設定
推定修繕工事項目の設定
推定工事費用の算定
マンションの工事箇所一覧
推定修繕工事費内訳書で支出を整理
出典:国土交通省 長期修繕計画標準様式、長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント(全文)(2022-02-24)

マンションの基本情報記載欄

ガイドラインには、マンションの長期修繕計画について、長期修繕計画標準様式を参考にして作成するよう記されています

標準様式には、敷地面積、延べ床面積、住戸数、竣工日、給排水・空調・電気など設備ごとの種類、建設に携わった施工会社・管理会社など、マンションの基本情報を記載する欄があります。加えて、設計図や構造計算書などの設計図書の保管状況をチェックできるようになっており、標準様式を確認しながら必要な書類などを集めることが可能です。

長期修繕について計画する場合は、マンションの基本情報をチェックすることから始めましょう。

修繕計画の総括表

標準様式には、修繕を行う箇所の計画や工事に掛かる費用(支出)、修繕積立金などの金額をまとめておける総括表があります。

総括表は、新築マンションの修繕計画を想定して約30年分の情報をまとめられる表になっており、各修繕工事のスケジュールと収支の状況を確認できるのが特徴です。

また、約30年分の収支グラフもあり、修繕工事ごとに修繕積立金が減ったり、修繕積立金がどれくらい積み立てられたりするのかを、グラフで確認することが可能です。

長期修繕計画の計画期間

ガイドラインには、長期修繕計画について何年ごとに修繕工事を行うべきかが記載されています。

新築マンションの場合は30年以上を計画期間とすることが記載されており、マンション管理組合はマンションに見合った修繕計画を立てなければなりません。

修繕周期の設定

修繕周期とは、マンションの立地や仕様、劣化状況などによる工事箇所について、修繕するべきタイミング(何年目を目安に修繕するのか)を定めたものです。

修繕周期は、新築マンションではマンションの仕様や立地などを考慮して設定するのに対し、既存マンションでは建物や設備の劣化状況などの調査・結果に基づいて設定します。ガイドラインに記載されている各工事箇所の修繕周期の例をもとに、修繕周期を設定しましょう。

工事の単価設定

ガイドラインには、工事の単価設定の考え方も記載されています。工事単価の設定は、施工条件を考慮し、工事部位ごとに仕様を選択した上で設定するのが一般的です。

新築マンションでは設計図書や工事請負契約による請負代金内訳書などを、既存マンションでは過去の計画修繕工事の契約実績や調査データ、刊行物の単価、専門工事業者の見積価格などをそれぞれ参考に行います。

また、保険料や消費税などの諸費用の計算・表示方法、地域差など考慮すべき点についても記載されており、単価設定の参考にできるでしょう。

修繕積立金の設定

ガイドラインでは、修繕積立金の金額の設定方法も解説されています。

長期修繕計画の計画期間における推定修繕工事費の累計額を計画期間の月数で割り、各住戸の負担割合を乗じる方法で1戸当たりの修繕積立金額の月額を算出します(均等積立方式)。

また、修繕の計画段階と実際の工事の段階では、修繕積立金を使う割合や積立金額、工事項目が変わる可能性があるため、修繕計画の見直しのタイミングで設定した修繕積立金の月額が変動することもあらかじめ把握しておく必要があるでしょう。

推定修繕工事項目の設定

ガイドラインには推定修繕工事項目の設定方法も記載されています。

新築マンションでは設計図書などを、既存マンションでは現状の長期修繕計画をベースに保管されている計画図書や修繕の履歴、調査データ、診断結果などに基づいて設定します。

一方で、区分所有者(居住者)要望などに対して、必要な場合は建物や設備の性能を向上させるための項目を追加しなければなりません。費用対効果や修繕積立金など、さまざまな要素を考慮して工事を実施する箇所を決めましょう。

推定修繕工事費用の算定

ガイドラインには、推定修繕工事費を算定する方法について記載があります。

新築マンションでは設計図書や工事請負契約による請負代金内訳書、数量計算書などを参考に、既存マンションでは現状の長期修繕計画をベースに、設計図書や数量計算書、修繕などの利益、現状調査、診断結果などを参考にして、長期修繕計画用に算出するように記載されています。

また、具体的な数量計算の方法は、建築数量積算基準・同解説(平成29年度)などに準拠して行う必要があるため注意しましょう。

マンションの工事箇所一覧

ガイドラインにある標準様式には、マンションの工事箇所を一覧で確認できる表が付帯されています。

屋上やバルコニー、手すり、廊下、設備など、一般的な大規模修繕工事で修繕が必要になる箇所がまとめられているのが特徴です。一覧表示されているため、工事項目をチェックしやすくなるでしょう。

推定修繕工事費内訳書で支出を整理

ガイドラインの標準様式には、推定修繕工事費内訳書のひな型が付帯されているので、各工事箇所の工事単価や数量をまとめられる他、おおまかな修繕金額を算出可能です。

ただし、管理組合が作成した時点では、修繕前の劣化状況・修繕周期などが反映されていないため、修繕工事前には内容を精査して具体的な工事費用を算出する必要があります。

 

大規模修繕工事中に注意したい「ベランダ」にまつわる事例

 

一般的な大規模修繕工事では、各住戸のベランダも工事範囲に含まれるケースがほとんどです。ベランダでは、床部の防水機能の補修・修繕工事や外壁塗装工事などが行われるため、居住者は工事が始まるまでに、ベランダの私物を撤去しなければなりません。

ベランダに置かれている私物の撤去の期日や期間は、工事の前に張り紙などで居住者に告知することになります。万が一撤去されていなかった場合は工事の進行に影響して、工程が送れる可能性もあるため、用心しなければなりません。

ここでは、大規模修繕工事中によくあるベランダにまつわる事例を解説します。

ベランダの床

ベランダは占有使用権が認められているものの、共用部分に当たるため、すぐに移動できるもの以外は置いてはならない、というのがルールです。先述のとおり、ベランダでは防水工事や外壁塗装工事が実施されるため、ベランダにある居住者の私物は撤去してもらうことになります。

特に注意したいのが床面です。物置や物干し台、植物などは室内や別の場所に移動させなければなりません。また、ウッドデッキやベランダタイル、バルコニータイル、人工芝など、床面に設置しているものは、剥がしてでも撤去してもらう必要があります。

さらに、撤去費用はすべて居住者の自己負担で行ってもらわなければなりません。工事開始までにベランダの私物を撤去してもらうよう、確実に告知することが重要となるでしょう。

ベランダの室外機

ベランダに設置してあるエアコンの室外機は例外で、撤去の必要がありません。施工業者が室外機を移動させて施工を行ってくれるためで、費用請求されることもありません。

ただし例外として、冷媒管が短い床面据置型の冷媒機は、数十センチの移動ができないため、自己負担で一時移設が必要になるケースがあります。

工事期間中はエアコンが使うことができますが、注意が必要です。

 

まとめ

 

今回は大規模修繕工事の工事期間について解説しました。

マンションの規模により異なりますが、大規模修繕の工事期間は3カ月から半年程度を目安にするといいでしょう。ただし、高層マンションや1,000戸以上のマンションでは1年以上の工期が必要になるケースもあります。

また、修繕工事の計画には1年から2年程度の時間が必要になるため、余裕をもって準備を進めておくことが重要です。

本記事を参考に、大規模修繕の工事期間について理解を深めておきましょう。

 

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