【プロが教える】大規模修繕の導入・費用・注意点まで分かりやすく解説 Part.1 | 株式会社ニーズワン

コラム
2022年9月20日

【プロが教える】大規模修繕の導入・費用・注意点まで分かりやすく解説Part.1

大規模修繕は、マンションなどの集合住宅で定期的に行う、建物全体のメンテナンスです。国土交通省が発表している長期修繕計画標準様式に基づいてあらかじめ計画を立て、状況に応じて内容を修正しながら修繕を実施していきます。

本記事では大規模修繕の導入をはじめとして、費用や注意点などをご紹介します。大規模修繕を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。

 

大規模修繕とはどんな工事をするの?

大規模修繕で計画される工事には、以下の種類があります。


仮設工事
外壁塗装
タイル補修工事
防水工事
鉄部塗装工事
建具・金物工事

例えば外壁塗装ならば、下地補修をすることでひび割れがなくなり、塗装で外壁が新築のようになる、といった改善がされます。それぞれの対象箇所の修繕により、マンションでの生活がより快適なものとなるでしょう。

 

大規模修繕工事が必要な理由

 

大規模修繕の目的は、建物から時間が経つことによって起きた劣化を元に戻したり、改善したりすることです。見た目の改善のみならず、雨漏りや震災への対策など、安心できる住環境にするための手入れでもあります。

また、大規模修繕は、マンションの経年劣化を防いで快適性や安全性を保ち、資産価値を極力下げないようにするために行います。

国土交通省が発表している標準様式に基づいた長期修繕計画をあらかじめ作成しておき、計画的に集めておいた修繕積立金を利用して、10~15年間隔で実施するのです。時間が経つことによる汚れや腐食などを修繕するだけでなく、建物自体や内部設備の性能を、時代に合わせて増強するケースもあります。

マンションの建物としての寿命を延ばし、資産価値を維持するために、状況に応じた適切な修繕工事を行うことが重要です。

 

大規模修繕の主な工事内容

 

大規模修繕の主な工事内容には、大まかに分類して以下のようなものがあります。


外壁修繕工事
外壁タイル補修工事
防水工事
鉄部改修工事
エントランス改修工事
外構改修工事
耐震補強工事
ハト対策
インテリア

それぞれの項目に関して詳しく紹介します。

外壁修繕工事

マンションの外壁修繕は外観を美しく維持する目的のほか、塗膜の劣化を防いで外的要因から守り建物を健全に保つために行います。放置してしまうとさまざまな劣化につながる恐れもあるため、定期的にメンテナンスを行いましょう。
例えば、ひび割れが生じモルタルが浮いてしまったり、鉄筋の爆裂が生じてしまったりしている場合、そのままにしておくとモルタルの剝落や雨漏りなどが起きるかもしれません。
一定の期間ごとに行い続けることが重要で、一般的には12年前後に一度のサイクルで実施することが多いです。この12年という期間は国土交通省による長期修繕計画作成ガイドラインに目安として記載されているものであり、建物によってはそれよりも長い場合や短い場合があります。
(参考:国土交通省「長期修繕計画標準様式 長期修繕計画作成ガイドライン 長期修繕計画作成ガイドラインコメント」)

外壁タイル補修工事

外壁タイルがあるマンションの場合、経年劣化などによってひび割れてしまったり、タイルが浮いてしまったりします。放置するとタイルが剝落して美観を損ねるだけでなく壁裏に被害を及ぼす危機があります。外壁タイル面からの雨漏りなどが起きる原因となるでしょう。
外壁の基礎となるコンクリート自他がひび割れているケースもあり、表面のタイルを張り替えなければいけなくなるだけでなく、コンクリートのひび割れ補修が必要となることも多いです。
外壁タイル面が面で浮いている場合は、タイル面を撤去し、コンクリートの表面を細かいザラザラした状態にする目荒らしという工程が必要です。これを怠るとタイルが面浮きしやすくないます。外壁タイル補修工事は外壁修繕工事と同様に、12年前後に一度のサイクルで行います。

防水工事

マンションの防水工事とは、居室への漏水を防ぐために行う工事のことです。
建物に雨などがしみ込んでしまった場合、耐久性に重大な悪影響を及ぼすため、防水工事はマンションだけではなくあらゆる建物になくてはならない重要な工事と言えます。主に屋上やルーフ、ベランダ、バルコニー、廊下など、雨水にあたるすべての部分が対象で、足場を組んで実施するため、外壁と一緒に12年前後のサイクルで行うケースがほとんどです。
防水層の破れや接合部の剥がれなどがみられる場合は、早急に修繕が必要となることもあるでしょう。

防水工事にはさまざまな仕様があり、用途に応じて選択する必要があります。屋上防水ならば、以下の防水施工方法を用いることが多いです。


アスファルト防水
塩ビシート防水
ウレタン防水通気シート工法

それぞれ性能を保証されている一般的な期間は10年間です。

廊下床面は、バルコニーと同様の塩ビシート仕様が採用されることが多いです。

鉄部改修工事

鉄は空気中や雨の水分と反応して酸化物を形成するため、放置してしまうとサビが発生する恐れがあります。
塗料で塗装している場合、塗膜と呼ばれる膜を形成して鉄の劣化を防いでいますが、経年劣化するため定期的にサビを落として塗装し直さなければなりません。本来ならばおよそ6年でメンテナンスする必要があり、これを怠って一定の築年数が経過したマンションでは、各所にサビが発生して塗膜が剥がれ落ちたり、腐食して穴が空いたりしてしまうでしょう。
著しく腐食が進むと、単純な塗装では修復困難なため、鉄部改修工事にて交換を行います。スチール手すりやスチール面格子をアルミ製のものに交換する、玄関スチール扉を被せ工法にて合成樹脂で覆われた扉に交換する、アルミサッシを被せ工法により断熱効果の高いペアガラスにするなどの対応が必要です。

エントランス改修工事

エントランスは老朽化を改善するほか、時代に合ったデザインにすることも大切です。建築されてから数十年経つと流行の見た目や求められる機能が変化するため、定期的にアップデートすることをおすすめします。
天井や壁、床を交換するだけではなく、オートロックシステムを導入したり、自動ドアを設置したりすることで、マンションの付加価値を付けられるでしょう。その他には集合郵便受けをA4の書類が入るような大型のものに交換する、LED照明に変更するなどの工夫も効果的です。

外構改修工事

マンション周りの外構も、美観に大きな影響を与え、時間が経つと老朽化が目立つ部分です。時代に合わせてフェンスを新たなものへ交換したり、住民のニーズに合わせて駐車場を機械式から平置きに変えたりといった改修工事を行います。

今後は、需要に合わせて電気自動車用の普通充電設備も必要になるでしょう。

耐震補強工事

地震大国の日本でマンションを維持する以上、耐震性の確保は避けて通れない課題と言えるでしょう。
マンションの耐震性は、安心・安全のために気にするべきであるのはもちろん、法律によって正しく管理する必要があると定められています。マンション管理の適正化の推進に関する法律(平成12年法律第149号)第4条にて、「管理組合は、マンション管理適正化指針の定めるところに留意して、マンションを適正に管理するように努めなければならない」「マンションの区分所有者等は、マンション管理に関し、管理組合の一員としての役割を適切に果たすよう努めなければならない」と明記されているのです。(※1)
建物の耐震性能を把握するには、まず耐震診断を行います。診断結果は構造耐震指針「Is値」で表され、建物の強さ、粘り、形状、劣化状況を考慮して評価されるものです。Is値が高ければ高いほど、耐震性が高くなると言えます。反対にIs値が0.6未満の場合は、耐震改修促進法等により耐震補強工事を行う必要性があると定められているため、すぐに対応が必要です。
マンションの耐進化については、国土交通省がマンション耐震化マニュアルを公表しているので、参考にしてみてください。(※2)
ここでは以前の耐震基準で建てられたマンションが100万戸以上あるとされており、現在の基準に満たない可能性が高いため、十分な耐震化のために行うべき内容が記されています。
(※1.出典:e-gov法令検索「マンション管理の適正化の推進に関する法律」)(2022-02-23)
(※2.出典:国土交通省「マンション耐震化マニュアル」)(2022-02-23)

ハト対策(鳥害対策)

大規模修繕では、ハトやカラスなどが飛んできたり、巣を作ってしまったりするのを防ぐための対策も可能です。官公庁や電力会社、電鉄会社などでも使われている剣山方のバードレスマットをベランダに設置したり、ネットを張ったりします。
バードレスマットは耐久性が高く、屋外耐候試験10年をクリア。設置も簡単で、万が一踏んでしまってもケガをするほどの硬さもないため、おすすめの方法です。
また、ネットは効果が非常に高い対策ですが、設置にはテクニックが必要かもしれません。粗雑に設置すると、風や雨などによって隙間ができ、そこから侵入されてしまう可能性があります。ネットの角を太めのワイヤーロープなどでしっかりと固定し、金属製の強い止め具などで外れないように施工することが大切です。

インテリア

施工業者によっては、大規模修繕工事の際に専有部のメンテナンスにも対応してくれるケースがあります。間取りの変更、床材の張り替え、壁のクロス張り替え、ユニットバスの設置、洗面化粧台の取り換え、トイレの取り換えなど、一般的なリフォームを併せて行うのがおすすめです。

 

 

 

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