マンションの建物診断とは?必要な理由と内容について徹底解説!

コラム
2022年4月25日

マンションの修繕時期が迫ってきているものの、修繕の具体的な優先順位や費用などが分からない方もいらっしゃるでしょう。
マンションの大規模修繕は10年~15年周期で行うのが一般的ですが、大規模修繕の前に行わなければならないのが建物診断です。マンションなどの建物の劣化状況を把握するには、建物診断は欠かせません。
そこで本記事では、建物診断が必要な理由と診断の内容などについて解説します。加えて、調査会社への依頼から建物診断が完了するまでの流れ、建物診断に必要な費用や期間も紹介するので、参考にしてください。

マンションの建物診断とは?

マンションの建物診断とは、建物の状態を適正に把握して劣化状態を確認するために実施される調査です。目視や触診、機械調査などで建物の劣化具合を詳しく確認します。
特にマンションでは、定期的に実施される大規模修繕の事前調査として建物診断を行うケースが多く、修繕工事の前に管理会社から建物診断を提案されることもあります。 なお、建物診断でできることは下記のとおりです。

経年劣化診断
耐震診断

経年劣化診断

具体的に下記の項目を確認し、写真付きの報告書にまとめた上で修繕工事の予算書が提出されます。

構造上の問題の有無
仕上げ材の浮き、割れの有無(外壁タイルやモルタルの浮き)
防水の劣化状況
隠れた瑕疵
各指摘箇所を改修した場合の費用

耐震診断

耐震診断とは、地震に対してどの程度の耐久性があるかを、現在の基準に当てはめて診断する調査です。
調査内容は文章で報告され、仮に問題があると判断された場合は、解決のための建物の補強方法と概算費用が提案されます。

建物診断が必要な5つの理由

大規模修繕工事を行うには、事前に建物診断を行いますが、なぜ建物診断を行うのでしょうか?

建物診断が必要になる根本的な理由は下記のとおりです。
大規模修繕の必要性を見極めるため
大規模修繕工事の時期を検討するため
目視では分からない修繕箇所を見つけるため
大規模修繕工事の費用の算出をするため
長期修繕計画の見直しをするため
それぞれの項目について解説します。

大規模修繕の必要性を見極めるため

建物診断を行う理由の1つが、大規模修繕工事の必要性を見極めるためです。
建物診断を行うことで、建物にどれだけヒビがあるか、塗装がはがれているかなど、劣化の程度や現状を把握できます。その上で大規模修繕が必要かどうか、必要ならいつ、どの部分を、どの程度修繕するか、などを確認できたり、修繕時の適切な工事工程を考えられたりするようになります。

大規模修繕工事の時期を検討するため

大規模修繕工事の時期を検討するためというのも、建物診断を実施する理由の1つです。具体的にいつ修繕工事を行うのかは建物の状況によって異なるからです。
大規模修繕工事の周期は10年~15年が一般的ですが、建物の劣化速度は建物の立地、面積、構造、使い方、施工時の建築基準法の規定などによって異なります。建物の状況を判断した上で修繕工事の時期を検討する必要があるため、建物診断を行って各部位ごとの劣化具合を調査し、修繕工事の是非、時期を判断するのです。

目視では分からない修繕箇所を見つけるため

建物診断は、目視では分からない修繕箇所を見つけるためにも行います。
外壁や屋上、階段、手すりなど、目視で判断できる場所については、マンションの所有者でもある程度確認できます。しかし、直接確認できない高い場所の外壁など、見ただけでは判断できない場合は、専門家に調査を依頼しなければ劣化具合を判断できません。
建物診断では打診棒を使った打診調査や専門の機器を用いた機械検査(仕上げ材調査・コンクリート調査・躯体余命調査)などで、建物の内部の状況を調査できます。建物の現状を正確に知ることができるため、修繕工事の是非や時期を判断しやすくなるのです。

大規模修繕工事の費用の算出をするため

建物診断は、大規模修繕工事の費用を算出するためにも行われます。大規模修繕工事の費用が修繕積立金の範囲内で収まるかどうかを確認しなければならないからです。
大規模修繕工事の内容は、建物診断で判明した建物の状況を反映した上で組成されます。そして修繕工事の費用には、組合員が毎月積み立てる修繕積立金があてられます。
工事費用が修繕積立金の範囲内で収まらなければ、工事費用の見直しや修繕一時金の徴収、借り入れなどを検討しなければなりません。工事費用の確認やその後の対応のためにも、建物診断が必要になります。

長期修繕計画の見直しをするため

建物診断は長期修繕計画の見直しをするためにも必要です。
マンションの維持には多額の資金が必要になるため、マンションごとに長期修繕計画を作成して維持管理に必要な費用を算出します。計画に従って、組合員は修繕積立金を支払うことになります。
しかし、年月の経過とともに計画と実態との間にずれが生じるため、長期修繕計画は定期的に見直さなければなりません。そして、建物診断や大規模修繕工事が実施されるタイミングこそ、長期修繕計画を見直すのに絶好のタイミングになります。

チェック項目に該当する場合は要注意!

建物診断を依頼するかどうか迷っている場合、下記にチェック項目を確認してください。

マンションを建設してから10年が経過している
そろそろ大規模修繕工事を実施したいと考えている
建物の外壁が劣化してきている
地震など自然災害で傷みが発生している
1つでも当てはまるようなら建物診断を依頼した方がいいでしょう。

建物診断の流れ

建物診断がどのような調査なのか、なぜ必要なのか分かったところで、実際に建物診断を行う流れを解説します。

大まかな流れは下記のとおりです。
1 業者に依頼する
2 事前確認(建築図面の確認)を行う
3 劣化箇所を住民からヒアリングする
4 目視・打診による現地調査を行う
5 診断結果が報告される

建物診断や劣化診断を行う場合、マンション側の立会が必要なため、調査の日程や流れを把握しておく必要があります。ただし、調査を依頼する会社によって建物診断の流れは異なるため、実際に依頼する場合は事前に確認しておきましょう。

(1) 業者に依頼

建物診断に対応してくれる業者を探して依頼します。建物診断は管理会社が紹介する調査会社や大規模修繕工事を請け負う工事会社に依頼できますし、調査会社を一から探しても問題ありません。
ただし、紹介された調査会社や工事会社に建物診断を依頼した場合、不要な工事や修繕積立金の状況に合わない費用を提案されるケースがあり、注意が必要です。そのため、管理会社や工事会社に属さない業者を選択するようにしましょう。
調査会社を探す場合は、メールや電話、問い合わせフォームから相談し、提案されたプランや費用から依頼する会社を選択しましょう。

(2) 事前確認(建築図面の確認)

依頼する業者が決まったら、次に行われるのが予備診断です。
調査会社がマンションを実際に訪問して、完成図(竣工図)・仕様書・長期修繕計画・修繕積立金・修繕履歴などの書類を確認し、診断内容に反映します。

(3) 劣化箇所を住民からヒアリング

予備診断と並行して、住民から建物の劣化箇所のヒアリングが行われます。住民が普段目にしている共用部分や居住スペースの劣化箇所を把握するのが目的です。もちろん、ヒアリングの内容も診断内容に反映されます。
予備診断と住民からのヒアリングが完了した後に、マンションの建物診断に必要な調査項目が洗い出され、具体的な調査内容が決定します。調査内容に応じて調査会社から建物診断の計画書と見積もりが作成・提示され、内容に納得できれば建物診断の事前準備は完了です。

(4) 目視・打診による現地調査

予備診断が完了した後は、調査会社と日程を調整してマンションでの現地調査に移ります。
実際の建物診断では調査員が現地に赴き、目視や打診、機械調査などの現地調査が行われて、建物の劣化具合が確認されます。調査される劣化具合の一例は下記のとおりです。

コンクリートの中性化(鉄筋の錆び、コンクリート構造物の劣化の原因
コンクリートのひび割れ(美観性、耐久性、水密性、気密性、構造性の低下の原因)
エフロレッセンス(コンクリートの中性化、鉄筋露出、美観の低下の原因)
仕上げ材の浮き・剥離(雨水の進入、タイルの浮き、剥落の原因)
金属部の錆び(機能性の低下、腐食の原因)
給水管・排水管の劣化(耐用年数によっては漏水などの原因)

(5) 診断結果の報告

すべての調査が完了した後、報告書とともに診断結果が報告されます。
マンション側には、建物の平面図(設計図)に写真とともに劣化状況の評価や判定結果を落とし込んでまとめた報告書が提出され、詳細が説明されます。調査会社によって詳細は異なりますが、報告書では劣化具合が何段階かで判定され、応急処置や本格的な修繕が必要な個所を把握可能です。
また、報告内容をもとにマンションの理事会での報告や大規模修繕工事の計画、長期修繕計画の内容変更などを行います。

建物診断の費用や期間

より詳細な建物診断を依頼する場合は、費用が発生します。
ここでは、マンションの建物診断の調査費用や調査期間について解説します。

建物診断の費用

有料の建物診断の一般的な相場は下記のとおりです。

30戸以下の小規模マンション 20万円~40万円程度
50戸~100戸の中規模マンション 30万円~50万円程度
100戸以上の大規模マンション 50万円~100万円程度

上記の費用はあくまでも一般的な費用相場で、調査項目によっても変動するため、調査会社の見積もりで確認しましょう。また、修繕積立金との兼ね合いがあるため、予算と照らし合わせながら調査項目を調査会社と検討するのが大切です。

建建物診断の期間

建物診断を実施する期間も建物の規模によって異なりますが、中規模マンションであれば調査に1~2日程度、報告書提出まで1カ月程度を見ておくべきでしょう。
また、業者への依頼から予備診断、住民へのヒアリングなどを実施することを考慮すれば、もう少し余裕を見ておいた方がいいかもしれません。

まとめ

今回はマンションの建物診断の内容や、建物診断が必要な理由について解説しました。マンションの建物診断とは、建物の劣化状態を確認するために実施される調査で、目視や打診、機械調査など調査が行われます。
マンションの現状を把握すれば、調査内容を大規模修繕工事や長期修繕計画などに反映できたり、工事が不要な箇所を判断して工事費用を抑えたりすることも可能です。
ニーズワンでは、お客様に満足いただける大規模修繕工事の実施を目指し、住民の皆さんの快適な生活を守りながら、マンションを美しくリニューアルできる大規模修繕工事を行っています。大規模修繕工事を検討している方は、当社にご相談ください。

株式会社ニーズワン サービス部

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