マンションの耐震補強工事の費用と工法を知る!築年数別に合わせて補助金も紹介 | 株式会社ニーズワン

コラム
2023年5月8日

マンションの耐震補強工事の費用と工法を知る!築年数別に合わせて補助金も紹介

 

日本では地震が多いため、マンションの耐震性能が資産価値に影響を与えることがあります。ですが、マンションの耐震補強工事ではどれくらいの費用が必用なのか、どのような工事が行われているか、わからない方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、マンションの耐震補強工事の費用や工法について解説します。また、耐震工事などに活用できる補助金も紹介するので、参考にしてください。

 

 

マンションの耐震補強工事の「大まかな流れ」

 

マンションの補強工事の大まかな流れは下記の通りです。


耐震診断を行う
耐震性能を判断する
耐震補強計画を検討する
耐震補強のための設計と見積りを行う
耐震補強工事を施工する

耐震補強工事を行うにあたって、まずは建物の現状把握と耐震診断が実施されます。
耐震診断は二段階に分けて実施されるケースが多いのが特徴です。
一次診断でマンションの共用部分をメインに、耐震性に関して問題箇所があるかどうかを診断します。一次診断の結果、問題が発見されると二次診断(本診断)が行われ、柱や壁などの耐震性を詳しく測定して、耐震補強工事の必要性が判断されます。

耐震診断の結果、耐震工事が必要となった場合は、診断判定や測定結果の数値(Is値)をもとに耐震補強工事の計画の検討が必要です。計画に沿った耐震設計と工事費用の見積もりの内容を確認して、契約となれば耐震補強工事が実際に施工されます。

耐震診断をしてから、耐震補強工事が完了するまでの期間は、1年から2年程度になるのが一般的です。

国土交通省が発表した「マンション耐震化マニュアル」

国土交通省では、マンション耐震化マニュアルを公表しています。

日本にあるマンションのうち、昭和56年の建築基準法施行令が改正される前の耐震技術で建てられたものが100万戸以上あるとされています。居住者の安全や安心の確保や防災性の向上のため、耐震工事などによる耐震化を図ることが課題となっているため、マンション耐震化マニュアルが策定されたのです。

マニュアルには、マンションの管理組合や区分所有者が実際に執り行う耐震化のための手続きや注意点などがまとめられている他、関係者の合意形成をスムーズにしたり、耐震改修の促進を図ることを目的として作成されています。

マンションの建替え・修繕、耐震診断・耐震化の進め方などについて詳細に記載されているため、参考にするといいでしょう。
参考:国土交通省「マンション耐震化マニュアル」(2022-02-23)

 

代表的なマンションの耐震補強方法

 

先述したマンション耐震化マニュアルにも記載されているとおり、建物の耐震補強の方法・工法にはさまざまなものがあります。
ここでは壁と柱の耐震補強に加え、外付けフレームの耐震補強について、具体的に解説していきます。

壁の耐震補強

マンションの壁の耐震補強では、建物自体の耐久性を高めることを目指して耐震補強が行われるのが特徴です。

代表的な方法として下記の二つを紹介します。


後打ち壁増設工事
鉄骨枠組補強工事

後打ち壁増設工事とは、マンションの既存の壁に新しい鉄筋コンクリート造の壁(RC造壁)を増設する耐震補強方法です。マンションの内部に設置できるため、多くのマンションで採用されている方法です。

また、鉄骨枠組補強工法とは、柱と梁に囲まれた部分に鉄骨製のブレース(筋交いのある鉄骨の枠)を増設するもので、開口部を活かしたまま耐震性を高められます。

柱の耐震補強

マンションなどの柱の耐震補強では、建物の柔軟性(しなやかさ)を増やすことを目指して耐震補強が行われるのが特徴です。

代表的な方法として下記の二つを紹介します。


耐震スリットの設置
連続繊維巻き補強

耐震スリットとは、柱に取り付く腰壁やそで壁と柱の間に隙間(スリット)を設けるという方法です。柱が動ける遊びを設けることで柱の靭性能が向上するため、実際に地震が発生した際に、地震の揺れを上に逃しやすく、建物自体の倒壊を防ぎやすくなります。

連続繊維巻き補強とは、炭素繊維シートをエポキシ樹脂によって既存の柱に巻き付けて接着する方法です。
こちらも柱の靭性能が向上するため、建物が地震の揺れを逃しやすくなります。

外付けフレームの耐震補強

耐震補強には建物内部を補強する以外に、建物の外側に鉄骨ブレースを設置したり、バットレスを設置したりする方法があります。

これらの方法の特徴は、耐震補強による既存躯体への影響を少なくできることです。建物の外側から補強するため、マンション内部や各区分に干渉するケースは少ないでしょう。

一方で、建物外部に新たなフレームなどを増設するため、敷地の余裕が必要になるのがメリットとなります。

 

耐震補強工事の予算感

 

耐震補強工事が必要となった場合に気になるのがコストです。
ここでは、マンションの規模別の耐震補強工事の予算感を解説します。

小規模マンション(総戸数50戸未満)

一般社団法人マンション再生協会が発表している2011年のデータによると、マンションの1戸当たり総事業費(工事費用)の平均は97万円となっています。

平均金額を基準に計算した場合、戸数が10戸の場合は約970万円、戸数が50戸の場合は約4850万円、中央値の25戸の場合は約2425万円が耐震工事費用の目安です。

ただし、同じデータでは1戸あたりの総事業費が100万円以上500万円未満となったケースが全体の約32%と多くなっているため、目安金額よりも高くなる可能性は十分にあるでしょう。
出典:一般社団法人マンション再生協会 マンションの耐進改修に掛かる意見交換会 報告書 耐震改修の事例より(2022-02-22)

中規模マンション(総戸数50~100戸位)

同じデータを中規模マンションに当てはめて考えた場合、耐震工事費用の目安は戸数が100戸で約9700万円、中央値の75戸で約7275万円です。

大規模マンション(大規模:100戸以上・団地・超高層タワーマンションなど)

こちらも同じデータで計算した場合、耐震工事費用の目安は戸数が150戸以上で約1億4550万円、200戸で約1億9400万円となります。

解説した耐震工事費用はあくまでも目安であり、マンションの状況などによて大きく変動する可能性があることを理解しておきましょう。

 

マンションの耐震補強費用を軽減する方法

 

マンションの耐震補強工事には相応の費用が掛かりますが、マンション側の費用負担を軽減する方法があるので紹介します。

具体的な軽減方法は下記の通りです。


助成金を使う
税制の優遇制度を使う
融資制度を使う

助成金制度を使う

助成金制度を使えば、マンションの耐震補強工事費用を軽減できます。

国の補助制度の住宅・建築物安全ストック形成事業を活用すれば、耐震診断や計画策定(耐震改修計画作成費、地盤調査費、建築設計費など)、耐震改修に要する費用の助成を受けることが可能です。

助成金制度の詳細は下記の通りです。

 

 

耐震診断 ・民間企業が実施した場合、国と地方が2/3を補助
・地方公共団体が実施した場合、国が費用の1/2を補助
補強設計など ・民間企業が実施した場合、国と地方が2/3を補助
・地方公共団体が実施した場合国が1/2を補助
耐震改修、建替えまたは除却 ・マンションの場合は国と地域が費用の1/3を交付
パッケージ支援 補強設計などと耐震改修または建替えをセットで行った場合、下記の助成金を交付(すべての国と地域による定額で交付)
  ・密集市街地など(防火改修含む):150万円
・多雪区域:120万円
・その他:100万円

出典:国土交通省 住宅・建築物の耐震化に関する支援制度(令和3年度)(2022-02-24)

税制の優遇制度を使う

マンションの耐震補強工事などを行うと、税制の優遇制度を受けることができます。
マンションのオーナーが耐震改修工事などを行った場合、固定資産税の減額措置を受けることが可能です。

具体的には、固定資産税額(120平米相当部分まで)が1年間1/2に減額されます。
特に重要な避難路沿道にある耐震診断義務付け対象の住宅は2年間1/2減額となります。

耐震改修による固定資産税の減額制度の対象となる住宅は下記の通りです。


1982年1月1日以前から所在する住宅
2013年1月1日から2024年3月31日までの間に、現行の耐震基準に適合する改修工事を行ったもの
1戸当たりの工事費用が50万円超

固定資産税の特例措置は期間延長されることが決まっていますが、念のため事前に確認しましょう。

融資制度を使う

住宅金融支援機構が実施する融資制度を利用すれば、耐震改修工事の費用負担を軽減できます。

マンションの耐震工事などを行う場合、下記の条件で融資を受けることが可能です。


融資限度額:融資対象工事以内(融資対象工事費に掛かる補助金などの交付がある場合は当該補助金などを除いた額)※融資額は10万円単位、最低額は100万円
金利:償還期間1年以上10年以内で年0.68%(返済期間11年以上20年以内の場合は年1.07%)
出典:住宅金融支援機構 マンション共用部分リフォーム融資(2022-02-24)

 

まとめ

今回はマンションの耐震補強工事の費用や工法について解説しました。

マンションの耐震性能を高めるための工法には様々なものがあり、耐震診断と合わせて適切な工法を選択することが大切です。また、耐震補強などを行う場合、助成金や税制の優遇、融資などを受けれる場合があるため、利用できるものがあるか確認するのも重要です。

本記事を参考にマンションの耐震補強工事への理解を深めておきましょう。

 

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