防水工事にはどのような種類があるの?工事を行う目的と掛かる費用を解説!

コラム
2022年5月27日

雨風にさらされるマンションにとって、防水工事は欠かすことができない工事の1つです。ですが、防水工事の具体的な内容やどれくらいの頻度で工事が必要になるのか、工事に掛かる費用の相場がどれくらいなのか、よく分かっていない方も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、防水工事の種類や工事の目的、工法によって必要になる費用について解説するので、参考にしてください。

防水工事とは?

防水工事とは、建築物に対して降り注ぐ降雨水を遮断して、漏水を防ぐために行う工事をいいます。
防水工事は、マンションをはじめとしたあらゆる建物になくてはならない重要な工事です。なぜなら、建物に降雨水が侵入した場合、建物の耐久性に影響を及ぼしてしまうからです。そのため、すべての建物で防水工事が実施されています。
防水工事が必要になる箇所は、主にマンションの屋上や屋根、ベランダ、バルコニー、廊下など、雨風にさらされる部分すべてとなります。
また、防水工事は新築時のみならず、定期的なメンテナンスとしても実施されるケースが多いことを理解しておきましょう。

防水工事が必要な理由

マンションなどの建物に防水工事が必要な理由を下記ご紹介します。
日本の気候条件として雨や雪が多いため
雨水が侵入すると建物の腐朽につながるため
雨水の侵入が居住者の健康被害につながるため

日本の気候条件として雨や雪が多いため

防水工事が必要な理由の1つは、日本は雨や雪が多い国だからです。
日本では毎年5月下旬から6月上旬に全国的に梅雨入りし、7月の中旬頃まで雨が多い日が続きます。また、夏から秋にかけては台風による暴風雨があり、冬になるとかなりの両の雪が降る地域もあります。建物は日照に加えて雨風にさらされるため、防水工事によって耐久性を高める必要があるのです。

雨水が侵入すると建物の腐朽につながるため

建物に雨水が侵入して建物の腐朽が進まないようにするのも、防水工事を行う理由です。
建物内部に雨水が侵入(雨漏り)すると、建物の構造躯体の腐食が発生することがあります。建物自体が劣化して寿命が縮まるのを防ぐためにも、マンションなどの建物には防水工事を行う必要があるわけです。

雨水の侵入が居住者の健康被害につながるため

雨漏りによって健康被害が発生するのを防ぐのも、防水工事が行われる理由です。
雨漏りによって、カビやコケ、ダニが繁殖しやすくなる他、木材が濡れると木材腐朽菌の活動が活発化します。アトピーや喘息、アレルギー、呼吸器疾患、下痢や嘔吐など、さまざまな健康被害を招く恐れがあるため、防水工事によって雨水をシャットアウトする必要があります。

上記のような理由から、マンションの防水工事は欠かせない重要な工事であることが分かります。新築時だけではなく、定期的な診断やメンテナンスが必要なため、防水工事を頼めるプロに対応を任せるのがおすすめです。

防水工事の種類

防水工事といっても、用途や躯体の種類などにより、さまざまな工法があり使用する材料も異なります。
ここでは代表的な防水工事の種類を解説します。防水工事として代表的なものは下記の3つです。

アスファルト防水
シート防水
ウレタン防水

アスファルト防水

代表的な防水工事の1つがアスファルト防水と呼ばれるものです。

アスファルト防水のメリットは下記のとおりです。
水密性や耐久性が高い
施工時の不具合が発生しにくい
メリットから見ても、防水力への信頼性の高さがうかがえます。
一方で、採用する工法によっては施工時に匂いや煙が発生すること、精度の高い技術が必要になり施工不良が発生する可能性が高いなどのデメリットもあります。

シート防水

代表的な防水工事の1つがシート防水です。シート防水には、塩ビシート防水とゴムシート防水の2種類があります。
塩ビシート防水は、塩化ビニール樹脂製の防水シートを、接着剤などを用いて下地に貼り付けるものです。ゴムシート防水はシート状に成形した合成ゴム製の防水シートを、接着剤などで下地に貼り付けます。

塩ビシート防水のメリットは、下記のとおりです。
シートを接着剤で貼り付けるだけなので施工性に優れる
紫外線や熱に対して耐久性を持っている
短工期・低コストで施工でき、維持管理費も節約可能
塩ビシート自体の耐久性が高く、保護塗装が不要
デザイン性に優れている
塩ビシート防水は耐久性とコスト面に優れているため、採用されるケースが多い防水方法です。一方、材料そのものが曲げたりすると切れやすく、施工時に注意しなければならないのがデメリットとなります。

ゴムシート防水のメリットは下記のとおりです。
伸縮性が高く、耐候性にも優れる
短工期・低コストで施工できる
軽量で建物への負担が少ない
一方で、シート同士の接着は接着剤と粘着テープで行うためはがれやすい点や、素材が薄いため鳥害による損傷が発生しやすい点がデメリットとなります。メリットやデメリットから、応急処置的に利用される防水方法となります。

シート防水にもそれぞれ特徴があるため、予算や状況に応じて最適な方法を検討することが大切です。

ウレタン防水

代表的な防水工事には、ウレタン防水があります。
ウレタン防水とは、液状のウレタン樹脂を下地に塗り込む施工を行います。ウレタン樹脂が固まることで、ゴム状の防水膜が形成され建物に防水機能を持たせる仕組みです。

ウレタン防水のメリットは下記のとおりです。
液状の樹脂を塗りつけるため、継ぎ目のない防水膜を形成できる
施工コストが安い
他の防水材料と組み合わせることができる
特に、他の防水材料との組み合わせが可能なため、防水機能を高めたり、地域の気候性に合わせた防水処理を行えたりできるのが特徴となります。一方で、ウレタンそのものが紫外線に弱いため、定期的なメンテナンス(トップコート塗装など)が必要になることや、ウレタンの乾燥に時間が掛かるため、廊下など不特定多数の居住者が毎日利用する箇所への防水処理には適さないことなどが挙げられます。

防水力が高い一方で、乾燥までに日数が掛かるため、施工箇所は工期も含めて慎重に検討する必要があるでしょう。

種類別防水工事の流れ

今回紹介した3つの防水工事それぞれの具体的な流れを解説します。

アスファルト防水工事の流れ

アスファルト防水工事の一連の流れは下記のとおりです。
1 既存物(金物など)を一時撤去
2 補修できない既存防水層を撤去
3 下地のコンクリートを平らに整える
4 施工部分の清掃
5 下地活性剤の塗布
6 新規アスファルト防水を施工
7 アスファルト防水の上に保護塗料を塗布
8 撤去した金物などを再設置
9 完了

アスファルト防水工事では、笠木などの金物を撤去して行われます。笠木の防水性能が低下している場合は取替えが必要ですが、状態によっては再利用して工事費用を抑えてくれる業者もあるようです。
その後は補修の利かない既存防水層の撤去や、下地となるコンクリートの補修などを行い、しっかりと清掃してから本格的な施工が始まります。下地と新規の防水層との密着性を高めるために下地活性剤を塗布した後、新しくアスファルト防水材が設置されます。
アスファルト防水工事は熱工法・常温工法・トーチ工法とさまざまな工法があるのが特徴です。
熱工法では200度以上に加熱されたアスファルトを用いて、2枚から4枚のアスファルトルーフィングシートを積み重ねます。常温工法(自着工法)は、裏面に粘着剤がコーティングされた改質アスファルトシートを下地に貼り付ける工法です。トーチ工法では、トーチバーナーを使いながら、アスファルトルーフィング材を下地のアスファルトに溶着させます。
防水層を施工したら、保護塗料を塗布して対光性を高め、防水層の寿命を高めるための処置を行います。最後に、撤去した笠木などの金物を再設置して防水工事は完了です。

シート防水工事の流れ

シート防水工事の流れは下記のとおりです。
1 端部金物や既存物の撤去
2 清掃と下地処理、補修
3 シート防水層の施工
4 金物の処理、再設置
5 完了

シート防水では、下地の処理が重点的に行われます。確実な下地がなければ、適切な防水処理が行えないためです。
下地の不良部分の撤去や補修はもちろん、勾配などに問題がある場合はコンパネなどで下地を作り直した後、防火処理などを施します。下地が完成したら、シート防水材を施工します。施工後は金物の設置を行い、防水工事は完了です。

ウレタン防水工事の流れ

ウレタン防水工事の一連の流れは下記のとおりです。
1 既存物や端部金物の撤去
2 旧防水層の不良部分の処理(補修、撤去)
3 プライマーの塗布
4 ドレン周りの処理置
5 補強布の貼り付け(立面・床面)
6 ウレタン防水材の塗布
7 保護塗料の塗布
8 完了

ウレタン防水工事では、既存物の撤去や旧防水層の補修・撤去を行った後に、下地とウレタン塗料の密着性を高めるためにプライマーの塗布を行います。
さらに、ドレン周りの処理と補強布の貼り付けを行った後、ウレタン防水材と保護塗料の塗布を行ってウレタン防水工事は完了します。

防水工事が必要な時期

防水工事は工法によって耐用年数が異なりますが、一般的には10年から15年周期で行うのが目安です。なお、工法別の耐用年数の目安は下記のとおりです。

アスファルト防水 12年から20年
塩ビシート防水 12年から20年
ウレタン防水 10年から13年

また、劣化状況から防水工事を行うべきか見極めることもできます。下記の症状が見られる場合は、防水工事を早急に検討した方がいいでしょう。
雨漏りがする
防水箇所に水が溜まっている
防水箇所に雑草が生えている
防水箇所がひび割れている
防水シートが浮いたり破れたりしている

素人目には劣化していないように見えても、劣化の原因となる現象が発生していたり、すでに劣化が始まっていたりするケースもあるため、業者などに定期的な点検やメンテナンスを依頼することをおすすめします。
なお、防水工事を行う場合は、適度な温度と湿度が保たれやすい春頃や秋頃がおすすめです。一方、雨が多い梅雨時期や真夏の暑い時期、台風などは避けた方がいいでしょう。

工事に掛かる期間は?

防水工事に掛かる期間はマンションの大きさや選択する工法によって異なりますが、50平米程度の面積の屋上だった場合、一般的には3日から7日程度で工事は完了します。
ただし、大規模マンションのように施工面積が大きかったり、複雑だったりする場合は、準備から完了までに1カ月以上必要になるケースもあります。他にも天候条件や防水工事の施工箇所の現状が、工事の進み具合に影響することがあるため、業者と打ち合わせの上、工期を確認しておくのがおすすめです。

防水工事の費用相場

防水工事を行う上で気になるのが、工事費用の相場です。 防水工事の費用は工法によって異なります。工法別での工事費用の相場の目安は下記のとおりです。

アスファルト防水 5,500円~8,000円/平米
塩ビシート防水 6,000円~7,500円/平米
ウレタン防水 4,000円~7,000円/平米

防水工事の工法は施工場所や施工箇所の状態などによって、選択できる工法が異なるため、費用相場や耐久年数、好みなどで防水工事の工法を選択できないことを理解しておかなければなりません。
業者に確認してもらった上で、最適な工法を提案してもらい、防水工事を行うかどうかの判断を下しましょう。

まとめ

今回は防水工事の工法の種類や工事を行う目的、工事に掛かる費用の相場について解説しました。
雨や雪、台風が多い日本の建築物において、建物の耐用年数を維持したり、居住者の健康被害の発生を抑えたりするために、防水工事は欠かすことができません。
また、防水工事にはさまざまな工法があり、状況によって選択される工法が異なります。耐用年数や工事費用も変動するため、信頼できる業者に点検・メンテナンスを依頼した上で、最適な方法を選択することが重要です。本記事を参考に、防水工事に関する理解を深めておきましょう。

株式会社ニーズワン サービス部

防水工事にはどのような種類があるの?工事を行う目的と掛かる費用を解説!