現場の周辺を歩き回ると、どこに行っても横山の姿を目にする。広い現場だと、1日に2万歩近くも歩き回ると聞いて、納得した。警備の仕事といえば、決まった場所に立って見張っているものだと思っていたが、横山はちがう。その日の工事予定をみて、必要な場所に向かって必要な仕事をする。
職人の車の到着時間、運び込む材料の大きさ、通行人の動線を頭にいれて、スムーズに出入りを誘導する。さらにマンション住民の引っ越しやリフォームの予定を掲示板でチェックし、マンションへの大きな荷物の搬入・搬出はできるだけ把握し、工事の車との混乱を避けるようにする。
マンション住民の年齢層も頭に入っている。お年寄りが多い場合は、通行の邪魔にならないように環境を整備する。子供が多い場所は特に注意が必要だ。子供が遊びやすい場所や、登下校の時間帯などを頭に入れてその場に動く。何気なく動いているようにみえて、実に考えられた行動なのだ。